文学的な身体ー16時の嘆息

 持っている言葉が少ないと それに対応して伝えられる事柄も減る 感じることや思うことが少なくても同じ 語彙や感性が貧しいっていうのは本当に不幸

 

持病というには少し大袈裟だけど私は閃輝暗点という偏頭痛の一種を患っている 頭痛がくる前兆として視界にギザギザした光が現れる その後の激しい頭痛を回避する術はないので光が見えた瞬間に絶望する   芥川龍之介閃輝暗点に悩んでいたらしくて 遺作の『歯車』にもその様子が書かれている 自殺の原因であるという推測もあるくらいだ 偉大な文豪と同じ悩みを抱えているということで少しだけ閃輝暗点に対する恨みが減る気がする でも確かにあの光を見た後の頭痛の最中では「殺してくれ」と思う 初めて閃輝暗点の発作が出た時に私は「なんか視界がチカチカしてる」と思ったのに 芥川は「たえず回転する半透明の歯車」と表現している こんなところにまで感性の差が出るんだなと悲しくなった

 

 夕方の感傷にも似た何かを表す言葉を私は知らない 文学部出身の性なのかどうにか言葉で説明しようとしてしまうけれど 何でも既存の表現に当てはめる必要ってもしかしたら無いのかもしれない  

 

そうそう お金で買えないものがあること 最近知ったんだよ

 

鋭い西日に目を細めた直後

太陽の残像が 閃輝暗点に似ていて背筋が寒くなった